デジタルリマスター版「シェルブールの雨傘」

デジタルリマスターは音楽だけではなく、映画・映像の分野でも多くの作品で貢献しています。特に製作後何十年も経った映画が生まれ変わって再登場するケースが増えてきました。

「シェルブールの雨傘」製作45周年記念特別企画として、「ロシュフォールの恋人たち」といっしょにデジタルリマスター版が製作され、劇場公開されています。[映画情報]


「シェルブールの雨傘」が1964年、「ロシュフォールの恋人たち」が1968年に製作された、どちらもミュージカル映画の傑作といわれます。両作品とも監督・脚本・歌詞をジャック・ドゥミ、音楽・作曲をミシェル・ルグラン、主演がカトリーヌ・ドヌーブという鉄壁のトリオで固められたものです。

とはいえ、私は「シェルブールの雨傘」しか観たことがありませんでした。あと父が買ったサントラLPが自宅にあり、音楽はよく聴いていました。映画ビデオが普及する以前は、いくら名作・傑作でも気軽に観ることは不可能でしたから、公開後何年も経って100円で「シェルブールの雨傘」が一度でも観られたのは幸運なことだったと思います。

だからオリジナルとの比較のしようも無いのですが、どちらも「美しい映画」でした。ビデオとは次元が違うフィルムの質感と原色を活かした色彩豊かな映像は、生まれ変わった、という表現がピッタリだと思います。さまざまなデジタル処理が施されているのでしょうが、純然たる「映画」を強く感じました。最新の映画ではこんな色使いをした美術には出会えません。

「ロシュフォールの恋人たち」は初めて観たのですが、テーマも設定も「シェルブールの雨傘」より明るいため、よりカラフルな映画になっています。

音楽はお馴染みの曲や、聞き覚えがある曲も多く、ルグランの絶頂期に相応しい名曲が揃っています。音もきれいにマスタリングされたようで、粒の揃ったクリアな音でした。

しかし、劇場の設備の都合なのか、サラウンドではなかった！

「ロシュフォールの恋人たち」のDVD仕様にサラウンドがあるのかは知らないのですが、「シェルブールの雨傘」のDVDはサラウンド仕様なので、上映もサラウンドでやって欲しかったなぁ。
残念ながら日本版は発売されていませんが、USアマゾンでは最新サラウンド版が発売中です。
[USアマゾン]

でも早々にBDがサラウンドで発売されるのでしょうね。

羅生門 デジタル完全版 [Blu-ray]

• 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
• メディア: Blu-ray

先月BDで発売された「羅生門」もデジタル技術で生まれ変わったそうです。まだ観たことはありませんが...
この作品のネガは不完全なため、現存するポジの中から状態がいいものを繋ぎ合わせて復元処理が行われています。[角川エンタテインメントのページ]

また、DEG(デジタル・エンターテインメント・グループ・ジャパン)が主催した「第1回ブルーレイ大賞」で審査員特別賞を受賞したディズニーのBlu-ray Discビデオ「眠れる森の美女/プラチナ・エディション」(2008年10月22日発売)も驚異的な復元が高い評価を得ています。

眠れる森の美女 プラチナ・エディション [Blu-ray] (期間限定)

• 出版社/メーカー: ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント
• メディア: Blu-ray

この作品はテクニラマによる70mmフォーマットで製作されたものだったのですが、日本ではこのフォーマットで公開されたことが無く、アスペクト比2.20:1という約二倍の面積比があります。

「眠れる森の美女」はテクニカラーという色を三つに分解した「３本のネガ」で撮影されていて、今回はこのオリジナルネガから復元を行ったそうです。保存されていたネガは7.62マイル（約13km）。音もしっかりやり直しを行い、7.1chにバージョンアップ。聴いてみたいなぁ。

同じ手法で次は「ピノキオ」も発売されます。

ピノキオ プラチナ・エディション (期間限定) (Blu-ray Disc)

• 出版社/メーカー: ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント
• メディア: Blu-ray

1940年、昭和15年！初公開。製作70周年。音声は7.1ch。欲しいものが次から次に出て来て困ります。