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Elton Johnが音楽を担当した「フレンズ」 [70年代]

「フレンズ」のヒットを受け、期待されて公開された「続フレンズ」でしたが、前作以上の実績も評価も得ることは出来ませんでした。原因はいろいろ考えられるのですが、決定的に違っているのは「音楽」でした。そう「フレンズ」の音楽全曲を、当時、絶頂期を迎えスーパースターの階段を確実に登っていたElton Johnが担当しました。
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もし「フレンズ」の音楽がEltonでなかったとしたら、私は映画館へ足を運ばなかったかもしれません。私のようにElton目当てで映画を観た人も少なくないはずです。1971年当時のEltonは「イエス・イッツ・ミー」のヒットで大きな注目を集めていました。正に世界的人気の爆発の直前にいたのです。どうしてEltonに音楽を依頼したのか、その経緯は分かりませんが、「フレンズ」の音楽担当を行ったGilbert監督の息子、John Gilbertの存在が重要だったと思われます。若い彼がEltonを推薦したのかもしれません。
また、もし「続フレンズ」もEltonが担当したら、または別の有名音楽家が担当したら、結果は違ったものになったかもしれません。
いろいろな情報をまとめてみると、音楽依頼を受けたEltonと歌詞担当のBernieTaupinは早速曲作りを開始します。作業の途中に脚本が届いたものの、Bernieはその内容を十分読むこと無く、John Gilbertの内容説明を聞いただけで作業を続けます。従って、予備知識も無く、映像も見ないまま歌詞を書き上げます。幸運なことに、その歌詞は映画の内容に巧く当てはまっていたとBernieはコメントしています。

Eltonは「フレンズ」の音楽の出来に満足していないようで、彼自身のコメントはありませんが、音楽制作過程で映画製作側から変更を求められ、自分の主張通りには進まなかったことが原因といわれます。確かにストーリーと歌詞の整合性は見事で、映画に合わせて修正された形跡も見られます。(これは後述します)
レコーディングは1970年10月、ロンドンのトライデント・スタジオで行われましたが、この時のメンバーは、Elton、BernieにGus Dudgeon(Producer)、Paul Buckmaster(編曲)にその後の黄金期を支えるミュージシャンが揃った、記念すべき初めてのセッションとなります。正にここから黄金期が始まったということです。

収録曲は、最終バージョンのCDの曲順で紹介します。(内)はLPの曲順で異なっていました。

1(A1)Friends フレンズ
2(B1)Michelle's Song ミシェルの歌
3(A4)Seasons 四季のテーマ
4(A5)Variation On Michelle's Song ミシェルの歌のバリエーション
5(A6)Can I Put You On キャン・アイ・プット・ユー・オン
6(A2)Honey Roll ハニー・ロール
7(A3)Variation On Friends フレンズのテーマのバリエーション
8(B2)I Meant To Do My Work Today 田園の一日
9(B3)Four Moods フォー・ムーズ
10(B4)Seasons Reprise 四季はめぐり来る

この内、6はEltonの次のアルバム用、5は既にライブで既に歌っていた曲で、映画製作側の要求に従って急遽提供したといわれます。確かに歌詞は映画の内容に整合していません。また、9は完全にBuckmaster作曲のインストで、変奏曲である4、7、8の多くはBuckmasterの仕事といえます。8には映画と同じRichard Gallienneの詩を朗読するAniceeの声が入っていて貴重でした。
つまり、歌として映画用に作られたのは、1、2、3の3曲となります。10は3と同じ歌詞の繰返しなので1曲と数えます。

映画は1971年3月25日にアメリカ(イギリス封切日は不明)で封切られ、サウンド・トラックLPは、映画会社パラマウントのレコード部門からイギリスは1971年3月5日、アメリカ同年4月、日本では6月5日にビクターからそれぞれ発売されました。一方、Eltonは自身の契約からイギリスDJMから7枚目のシングルとして1971年4月23日、アメリカはUNIから同年3月5日、日本では東芝から5月25日に発売されました。B面には6の「Honey Roll」が収められました。日本では夏にヒットし、晩秋の映画公開を前に絶好のプロモーションが行われたことになります。

日本盤LP(日本ビクターSWG-7512)は、映画の情報が少なかったためか、曲名の「ミシェル」が「マイケル」と間違えていたり、Aniceeを「アリス・アルビナ」、John Buryを「ジョン・ブーリ」と読み違えています。それともAniceeの英語読みは「アリス」なのでしょうか?個人的に不愉快なのは、Aniceeのことを「美少女ではない」と言っている点です。書いたのは誰だ!

日本盤は、その後パラマウントレーベルがABCレコードの中に統一されたため日本コロムビアから、さらにABCがMCAに売却されて再びビクターから、私が知る限り違うレーベルで3回発売されています。「Friends」という曲、ヒットしたにも関わらずEltonがほんとに嫌いになっていたのか、彼のLPに長い間収録されなかったため、サントラLPの発売は貴重だったと思います。また日本初回のビクター盤には訳詞(今野雄二)があったのも嬉しかったです。CDには歌詞も訳詞も収録されていません。

今回のDVD発売で、どのように音楽が使われていたのかを調べやすくなりましたから、早速聞き比べてみました。

 00:48〜03:08 1 Friends フレンズ
 03:20〜05:27 6 Honey Roll ハニー・ロール
 16:16〜16:43 5 Can I Put You On キャン・アイ・プット・ユー・オン
 17:55〜19:00 9 Four Moods フォー・ムーズ(一部)
 24:26〜26:05 8 I Meant To Do My Work Today 田園の一日
 29:07〜29:48 2 Michelle's Song ミシェルの歌(歌詞の二番)
 30:28〜32:24 2 Michelle's Song ミシェルの歌(歌詞の三番と一番)
 46:29〜48:08 7 Variation On Friends フレンズのテーマのバリエーション
 49:17〜49:43 9 Four Moods フォー・ムーズ(一部)
 50:16〜52:18 9 Four Moods フォー・ムーズ(一部)
 56:52〜58:13 9 Four Moods フォー・ムーズ(一部)
 59:55〜60:52 9 Four Moods フォー・ムーズ(一部)
 61:18〜63:36 9 Four Moods フォー・ムーズ(一部)
 73:58 75:11 3 Seasons 四季のテーマ(歌がある後半のみ)
 96:08〜96:50 9 Four Moods フォー・ムーズ(一部)
100:17〜100:58 10 Seasons Reprise 四季はめぐり来る(後半のみ)

う〜ん、「Variation On Michelle's Song ミシェルの歌のバリエーション」が見つかりませんでした。初回のビクター盤には、この曲には「初めての口づけ」という副題があるので、そのシーン(38:27〜38:54)にに音楽は入っていませんが、計画ではそこに付ける予定だったのでしょうか???

気になったのは二つに分けられた「Michelle's Song」。
最初はアルル方面へ向う列車のシーンに使われていて、歌詞は二番。一旦途切れ二人が歩いてカマルグのコテージへ向うシーンに三番と一番、と映画のシーンに合わせて歌詞の順番を入れ替えています。でもよく聞くと、伴奏は一番から三番まで全部違うのですが、最初の二番の歌詞に一番の伴奏を、次の三番の歌詞にもう一度一番の伴奏、三番の歌詞に二番の伴奏を、それぞれ入れ替えていることが分かりました。一番盛り上がる三番の伴奏は使われていません。見事なミックス違いです。

「Can I Put You On」は、Paulが「チビモーツアルト」と一緒に自分の部屋で着替えるシーンでCDの3:00付近から使われているのですが、同じ箇所がないのです。これもミックスを変えた可能性があります。

とはいえ、映画は「モノ」ですから、全部LP、CDのステレオとは違うミックス違いのモノバージョンです。「田園の一日」だけはステレオの意味があり、Michelleがやや右、Paulがやや左と、映像に合わせたポジションになっています。

Eltonは「フレンズ」前後の作品を5.1chSACDでミックスし直していますから、せめて歌詞がある3曲だけでもボーナストラックとして5.1chを作って欲しかったのですが、その希望は適っていません。相当いやな印象を今でも持っているからでしょうか。

歌詞がある3曲の内の2曲は歌詞は完全に映画の内容に沿ったもので、これは撮影の進行に合わせ相当やり直しを行ったような気がします。まず「ミシェルの歌」は、正にMichelleとカマルグのこと歌ったもので、前述の通り、最終的には歌詞を並べ替えています。

「四季はめぐり来る」は2回も、しかもエンディングにも使われた重要曲で、「It's funny how young lovers start as friends」という歌詞に監督の思い入れがあります。「友達として始まった若い恋人たちはいったいどうなるの」(DVDの字幕では「友達がどうして恋人に変わるのだろうか」)という内容は、意味深な映像の終わり方をさらに言葉でもだめ押ししています。これが原作者Lewis Gilbertの最大のテーマだと言えるかもしれません。

もう1曲、目玉の主題歌ですが、これは映画の内容とは必ずしも合致していません。「Friends」というキーワードをだけを意識してBernie Taupinが自由に作った歌詞であり、音楽担当として意地を見せた、Elton Jonhの真骨頂だと思います。Bernieが偶然巧く合った、という発言は、これを指していると思います。それにしても大傑作!!!

最後に、当時は存在させ知らなかった同性愛、それを公言したEltonがこの映画の音楽を担当したのは皮肉です。純粋な男女の恋がテーマのこの映画を嫌うのは、この辺りにも理由があるのかもしれません。
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コメント 2

モーランG

すごい! 凄い考察ですね、感動しました!
sowhatさんのブログほんと勉強になります。
LPマイケル(笑)の件は私も激怒しており、
やっつけ仕事の商品化を軽蔑してます。
たぶん担当者は映画を観てないですよね。

Eltonは映画Friendsに満足してないようですが、
71年日本ライブでは♪Friends歌ってるんですね。
彼のサービス精神なんでしょうか。
  (Youtubeでライブ盤の音声が聞けますネ。)
また2002年の映画「THE COUNTRY BEARS」内の、
挿入歌としても♪Friends利用されてました。

同性愛者にFriends、、たしかに皮肉ですよねー。
そして更にFriendsやエマニエル夫人等の、
性のタブーに対峙した映画や時代のウェーブが、
近代における性の形態の自由化を認め、
同性愛者への理解にもつながってる・・・
~ような気もするので、、二重に皮肉な感じも?
by モーランG (2008-03-30 06:31) 

sowhat

モーランGさん

今度もお読みいただき恐縮です。

> LPマイケル(笑)の件は私も激怒しており、
> やっつけ仕事の商品化を軽蔑してます。
> たぶん担当者は映画を観てないですよね。

外国での公開直後にLPを発売していますから観ていないでしょうね。
ほとんどの情報が推測で書かれています。
でも当時の情報環境ではよくあったことで、私は同情します。
LPのレーベルは「Michelle」を「Michell」とタイプミスしてますし、
舞台がフランスだという情報もなく、イギリスだと推測しているので、
男の役名を「マイケル」と早とちりしたのかもしれません。
問題は、その後修正しなかったことです。

> Eltonは映画Friendsに満足してないようですが、
> 71年日本ライブでは♪Friends歌ってるんですね。

曲としての「Friends」は彼の意思で作ったようだし、
日本では特にヒットもしたのでやったのでしょうか。

> Friendsやエマニエル夫人等の、
> 性のタブーに対峙した映画や時代のウェーブ

仰る通りの時代でしたね。
私はその時代に思春期を迎え、ドップリ浸りました。
よかったのか、悪かったのか(笑)。
「エマニエル夫人」は高校で観ることを禁止されていたのですが、
観に行った映画館で高校の先生2人とバッタリ会ったのが思い出です。
by sowhat (2008-03-30 09:20) 

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