SSブログ

DVD「Zappa Plays Zappa」 [Frank Zappa]

オーダーを出して約2週間、ちょっと忘れかけていたところにDVD「Zappa Plays Zappa」が届きました。

来年早々にVaiをゲストにDweezilがバンドを引き連れて来日するのですが、Terryが来ないことで食指が動かず、DVDも大した期待をしていなかったのです。かつてのアーティストは誰も彼も「再結成、懐かしのロックコンサート」ばっかりで、私としてはこの手のコンサートは全然興味が湧かないもんですから、Frankの虚像を見る様なノスタルジーにも興味が持てなかったのでした。コンサートには行かないもののDVDは観ておこう、そんな軽いノリでした。

届いたのはDVD2枚組。曲名やクレジット、Dweezilの簡単な挨拶文がある程度の、至って簡素なパッケージは期待感を持つには遠い出来でした。ともあれお目当てはTerryなのです。


*DVDの画像ではありませんがzappa.comより[Kansas City, MO. October 19, 2006]

最初は予想通りの展開で、名前は知りませんが腕の立つプレイヤーたちが忠実に曲を再現します。Dweezilは予想以上に巧いのにちょっと驚きました。かなり練習したんでしょうね。Napoleon Murphy Brockのボーカルとパフォーマンスは70年代中頃の雰囲気を醸し出しています。DweezilはFrankのギターはなぞるもののリードボーカルはほとんど取らず、Napoleonがその役目を負っているのですが、いやぁ巧いですよ。仕草もかっこいい。声にも張りがあるし高音も出ているし、何よりステージに華やかさを振りまいてくれます。知らず知らずのうちに、不覚にも(笑)Frankの姿と重なりました。

このDVD、音がいい。非常にいい。生き生きとした音が一つ一つ鮮明に聞こえるし、ライブの5.1chとして完璧な臨場感を味わえるミックスです。アナログ時代の様に音の塊で聞かせるのも悪くないですが、いくら音量を上げてもうるさくない、こんなデジタル録音に惹かれます。夜なのにガンガン音量を上げてしまいました。気持ちいい。これほどすっきりした大音量で聞けるライブDVDは思い当たりません。

途中にDweezilのMCが入り、この企画が実現できたことへの感謝が述べられるのですが、英語が全部わからないものの、観客の反応が凄まじくDweezilが涙ぐみます。私もグッときました(涙)。やっぱりFrankの作品と業績は生き続けているんです。演奏形態が変わっても作品の本質は全然変わらず、永久なんですね。Frankは単なる「ロックプレイヤー」なんかじゃないんです。偉大なる「作詞作曲者」であり「音楽創造者」であったことがひしひしと伝わってきました。

ステージには、ライトが当たっていないもののチラチラ見えるステージ上手の巨大なドラムキット!正しくTerryのキット、それも先日の来日で使ったものと同じ様なセッティングに見えます。Missing Personsがそうだったように、ドラムを最前列に置けるのはTerry以外にはいないですね。相当、不自然(笑)。ステージの袖の最前列だとバランスが悪過ぎ。やっぱりTerryの希望なのかな?

*DVDの画像ではありませんがzappa.comより[Minneapolis, MN. October 20, 2006]
ステージ上手の最前列にTerryのドラムキットが見えます。

いよいよTerryが登場して、会場の雰囲気はより一層盛り上がります。Terryが70年代に戻って「I'm So Cute」を歌うんですよ! こんなシーンが再び見られるなんて誰が想像したでしょうか!

*DVDの画像ではありませんがzappa.comより[Boca Raton, FL. December 10, 2006]

作品としての音の良さは触れましたが、撮影の巧さも最上級です。カメラは6台くらいに固定の小型カメラを組合せて、クレーンも使い、曲に合わせたスイッチングは完璧だと思います。だからドラムキットに囲まれて撮りにくそうなTerryのプレイも確実に捉えています。足下のペダルのアップまで!Terryファンにとって、これ以上の見せ場はないでしょう。やっぱり8ビートを叩くTerryが最高です。だから「巨大キット」はちょっと持て余し気味(笑)。ここで1枚目が終わります。ほぼ2時間! いったい何時間続くのでしょうか。

2枚目は「Black Page #1」に始まり、「#2」のメドレーからいよいよVaiが加わります。Terryとの共演は、やっぱり夢の組合せですね。「ZPZ」だからできる共演。なんか気絶しそうです。

*DVDの画像ではありませんがzappa.comより[Minneapolis, MN. October 20, 2006]

ぼんやりと期待はしていたもの、目の当たりにすると感動ですね。「Regyption Strut」などインストゥルメンタルだと再現度がますます上がります。Napoleonはボーカルだけではなく、テナーサックスやフルートでも聞かせてくれます。彼の存在は重く、もし彼がいなかったらこれほどにはまとまらなかったに違いありません。

後半の方により有名曲が続くので、あの曲が、この曲が、さらに壮絶なドラムソロの掛け合いがあったりと息つく間もなく、終わってみると2枚目が1時間40分あまり。合計3時間40分。すばらしい充実感です。こんな満足感、DVDでは初めてです。

正直、これほどとは予想していませんでした。Dweezilを甘く見てました。ごめんなさい。
企画そのものには疑問があったものの、実際に見せられると完成度の高さには参りました。どこまでのスコアが残っていたのか、新たにアレンジした部分もありますが、複雑なリズムとメロディは勢いでできる内容ではないので、入念なスコアが用意され何度も何度もリハーサルを行わないとこれだけの成果は生まれるはずがありません。
映像作品としての完成度も最上級で、しっかりとしたプランを組み、撮影用のリハーサルもしっかり行ったと思います。
録音の完成度を求めることは当然ですが、プレイヤーが多いのでマイクセッティングは複雑。おまけにTerryの超弩級キットが途中から加わるのですから、エンジニアたちの苦労は並大抵ではなかったことでしょう。48Trを使ったのでしょうか。それが最上の5.1chにミックスダウンされた訳ですから、文句の着け様がありません。

これは現代を代表する最高の5.1ch音楽映像作品です。本人がいなくてもFrank Zappaの代表作になり得る作品です。聞くところによると準備した曲は100曲を超えるらしいので、残りの曲もDVDとして残して欲しいと思います。
死後、自身の録音作品が残ることは当然ですが、残されたスコアが再現されて新たに誕生する、これこそ「コンポーザー」としての存在が確立された証拠です。単なるトリビュートではありません。

100年後でもストラビンスキーやバレーズと共に「Frank Zappa」という名前が継承されているのではないでしょうか。


タグ:Frank Zappa
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。