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Over-nite Sensationの4ch [Frank Zappa]

Zappaは生前、2つの4ch作品を発表していました。4chが最高潮(極一部でしたが)の頃、
この『Over-nite Sensation(興奮の一夜)』と次作にあたる『Apostrophe』が
「CD-4方式」のLPで発売されました。

死後、5.1chがメディアとして確立し、DVD-Audioなど発売できるようになると、
相次いで5.1chが発売されました。どれもZappa本人が4chを完了させていたもので、
4chが継続していたら発売するつもりだったのだと思います。

しかし、1970年代の4chは、とにかく評判がよくありませんでした。
確かに4本のスピーカーを置くのは簡単ではないし、決定的なコンテンツが出なかったし、
多くのオーディオ評論家が評価しなかったので、1976年頃には消滅してしまいます。
でも、今聞いてもすばらしいサラウンドや音質の作品も多いんですよ。
マスコミ、音楽関係者、評論家を含め「4chを聞く環境」が整っていなかったことが
正しい評価を見いだせなかった理由だと私は考えています。
この環境は、30年経った5.1chの現在でもぜんぜん進歩していないんですよね。
サラウンドがなかなか普及しないのは残念なことです。

『Over-nite Sensation』はZappaにとって初めての4chで、
1曲目「Camarillo Brlliro」の中では「彼女のステレオは4ch(英詞は4 way)」と
歌っているくらい、のめり込んでいます。
だから『Over-nite Sensation』は4chで聞かなければいけないのです(笑)。
通常2chでは味わえないサラウンドは、リスナーを取り囲むように楽器が定位するのですが、
特筆したいのは全体に広がるドラムなのです。
叩いているRalph Humphreyは短期間の参加でもあり、高い評価を聞きませんが、
4chで聞ける彼のドラムは、正に暴れまくっています。サラウンドで暴れまくります。
おまけにずしり、ずしりと重量感があり、かなり大きなレベルでミックスされていて、
サラウンド効果はともかく、ここまでのドラムの音は2chでは全然聞くことができません。

ここ数年、「4ch盤は高音質」という謳い文句を頻繁に見るようになりましたが、
4ch盤を2chハードで聞いても決して高音質ではありません。
特に「CD-4」が20〜40kHzという通常の2倍の周波数帯域を記録しているので
高音質であると解釈されているようですが、実際の音の帯域は20〜15kHz程度で、
それより上の帯域は音ではなく、4ch分離のための「信号」なのです。
「CD-4」も他の「SQ」「QS」「RM」などのマトリクス4ch方式も、
2chで聞くと通常2chミックスとは違って聞こえるものがたくさんありますが、
高音質とは「次元が違うもの」なので、コレクターの方はご注意ください。
あるいはデコーダーやデモジュレーターを手に入れ、実際に4chに変換してお聞きください。
5.1ch入力があるAVアンプで「4.0ch」として聞くことができます。

「CD-4」の欠点を少し。ノイズが出易く、再生がとても面倒なんです。
もちろんデモジュレーターが必要ですが、マトリクス方式が通常の2chカートリッジで
対応できるのに対し、「CD-4」は専用のシバタ針が付いたカートリッジがないと
4ch再生は不可能です。デモジュレーターの調整もちょっと手間がかかります。
さらに「CD-4」の溝は非常に細いため、扱いは2chよりも慎重にしなければならず、
もし間違って2chの針でトレースすると溝が傷んでしまうのです。
今となっては「CD-4」は中古でしか手に入らない訳ですが、
2chの針でトレースして溝を傷めてしまったものが多くて、
聞いてみるとノイズだらけになり、とても聞くことができないのです。

4chは、前述した高音質との注目と稀少であることから相場が上がっています。
いわゆる「名作の4ch」も少なくありません。
せっかく手に入れても、溝が傷んでいるとガッカリなのです。
何枚買ってもハズレているものも多く、悔しい思いをしているのです。
見た目では正常に見えても針を落としてみないと分からないんですよね。
これが「CD-4」の欠点で、今回の『Over-nite Sensation』も、
ノイズがない完璧な状態では再生できないのでした。

そこで手を出さざるを得ないのが、4chテープとなります。
4chの『Over-nite Sensation』は、オープンリール(6mm)と8トラックで発売されたのです。

LPも日本未発売でしたが、こんなテープ、日本には入らなかったことでしょう。
これらが今でも何とか手に入るのは、インターネットオークションのお陰です。感謝、感謝。
でもこれを聞くためには4ch仕様のオープンデッキ、8トラックプレイヤーが必要になります。
30年以上前の機器、もちろん売っていません。カラオケの8トラックでは聞けません(笑)。

でもテープの音はLPのようなノイズが皆無ですから、ストレスがなく、その音は完璧です。
特にオープンリールの音は、チャンネル分離度はLPとは較べものにならないし、
何より音そのものの質が圧倒的に高く、極上のサラウンドを再現してくれます。
これこそが、Zappaがマスタールームで聞いた音だ!

でもCD、DVDの使い易さに慣れた今、オープンリールの扱いは面倒過ぎます。
あちらを立てればこちらが立たず、苦労は尽きません。


タグ:Frank Zappa
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