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King Crimson『Islands』 [5.1chサラウンド]

21.jpg「ロック」の定義はちょっと難しいけど、Rolling Stones、Led Zeppelin、Deep Purpleを典型的なロックとするなら、King Crimsonはかなり離れた位置に置かれるロックであろうし、その作品の中でも『Islands』は最もロックからは遠ざかった存在だと思います。ジャンル分けが無意味だし、どんな既成概念にも当てはまらない、正にプログレッシヴな一枚。
同時に分かり難い。他の作品に較べ評価は高くないし、多くは売れていないだろう…。もちろんノリのいい音楽でもなければ、心地いいBGMにも使えない。歌詞の内容も難解で、少なくとも私には理解出来ない不思議な世界。だから気軽には聴けないし、聴いた後の満足感も薄かったのです。
サラウンド贔屓の私ではありますが、決して「サラウンドになったから作品の質が良くなった」とは言いたくはないのです。でも昨年の『Lizard』とといい、この『Islands』も5.1chを聴いてこれまでのイメージが大きく変わってしまいました。2chを聴き込まなかったこと、気付かなかった私が悪いだけなのですが、5.1chという2chとは異なる聴き方によって目覚めてしまったのは事実。でも絶対に2chには戻れない、これも事実です。

22.jpg『Islands』は重々しい弦から始まります。チェロ?、いやダブル・ベースをボウイングしているのでしょう、これが5.1chではリアのセンターにドッシリと置かれています。これが凄い。意外性。いや論外の存在なのか? 冒頭からロックの概念とは程遠いし、所在不明の世界に引き込むのは間違いなし。それも多くの人が拒否する「後ろ」から聴こえて来る。この違和感と新鮮さを良しと感じるか、否と感じるか。2chでは当然の如くど真ん中。ここにプログレッシヴを感じるかどうかが決定的な分岐点。ロックであれクラシックであれジャズであれ「フロントから聴こえて来ない」ことが前衛性を受け入れるかどうかの重要かつ決定的なポイントになります。リアから出て来るベース、音像が大きいです。ダブル・ベースが背後に姿を見せますよ。そして『Islands』5.1chの特徴は、このリアのセンターというポジションが多用されているということ。ヴォーカルがほぼフロント・センターにしっかり定位し、それに呼応するリード楽器がリア・センターに置かれて、リスナーを挟み込むのです。この音響がロックでもなければクラシックでもジャズでもない、King Crimsonの存在に相応しい様式であることが初めて表現出来た、と思います。

04.jpg「40周年版」には5.1chだけでなく、いくつかの2ch音源も含まれ、各自、自由に楽しめる訳ですが、どうして5.1chなのか、Fripp自身の手ではなく他人に任せてまで作らせたのはどうしてなのかを考えてみると、Frippの意図が分かるのではないでしょうか。まだまだ「前へ」進もうとするFrippの創造意欲は留まることを知りません。いや、リマスターして音質を向上させても、あるいはリミックスしても、2chでの表現では所詮40年前と同じで前進は無い、ということ。音源の変化、つまり音質向上も前進ですが、40年前には無かった音響環境で聴くことに新しい前衛性を発見出来るのです。

サラウンドを知らなければ知らないほど、5.1ch King Crimsonの衝撃は大きいはず。ただし保守的な聴き方を求めるのであれば意味なし。過去の様々な2chミックスと比較分析もあるでしょう。ただし、そこにはもう「プログレッシヴ」というコンセプトは存在しないのです。

40年間も同じであるものがプログレッシヴであるはずがない。
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HIKKY

この「Islands」、もともとKクリムゾンのアルバム(スタジオ録音盤のみ、DISIPLIN以降除く)の中で、唯一異質な存在に感じてました
前の3枚の流れからは別なポジションにあるし、
かといって、後の3枚にも属さないし
ある意味浮いた存在だけど、それゆえ、その孤高な佇まいが好きだったりします
5.1chまだ入手してませんが、聴くのが楽しみです
by HIKKY (2010-10-18 22:40) 

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