「マイルスの夏、1969」中山康樹 [本]
またまた発売、中山先生のマイルス本です。
違う出版社から少し前にこちらも出て、また違う出版社からも。
出版社が違えども時代順にシリーズになっていて、次は「1972年の夏〜On The Corner」の予定だそうです。
マイルスもザッパも作品数が多く、かつ音楽性は変化して行きましたから、時代により好き嫌いが出てしまいますが、私がいちばん好きなマイルスの時代、それが今回の本の時代、1969年前後の時代です。
「マイルスの夏、1969」では、「Miles In The Sky」から「キリマンジャロの娘」「Water Baby」「In A Silent Way」そして「Bitches Brew」までの、「マイルスの電化」の過程が綴られています。彼を取り巻く女性、ミュージシャン、スタッフとどのように関わって来たか、同時代の音楽界の横の繋がりをていねいに解き明かしていきます。大きな流れ以外にも複雑な関係、特にジャズ以外の音楽にもいろいろな影響を受けていたことに驚きました。
1969年頃は、マイルスとしては「Lost Quintet」と言われる時代で、ライブのメンバー5人のみでのレコーディングがなく、ライブとスタジオの考え方が全く違っていた特別な時期でした。更に「編集」という新たな手法を用いて大胆に作風を変え、ジャズという枠を完全に飛び出し「マイルスの世界」を確実に歩み始めていきます。後追いで聴いた私ですが、これ以降の展開は時間軸を無視してもぞくぞくさせられます。
以下に、本書に登場するマイルスに影響を与えた作品を並べてみます。どれも有名作。それぞれが影響し合って切磋琢磨していた時代だということが分かります。
- アーティスト: ハービー・ハンコック,サド・ジョーンズ,ペーター・フィリップス,ジェリー・ドジオン,ロン・カーター,ミッキー・ローカー
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2008/03/26
- メディア: CD
モントゥルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス +1
- アーティスト: ビル・エヴァンス,エディ・ゴメス,ジャック・ディジョネット
- 出版社/メーカー: ポリドール
- 発売日: 1997/06/04
- メディア: CD
レコーディングに参加したミュージシャンがどのようにしてマイルスに出会ったか、なかなかドラマティックです。マイルスの目指す音楽、そしてその実現にどんなミュージシャンが必要なのか、マイルスの苦悩も見えてきます。
ロックの1969年もジャズの1969年も激動の一年でした。そして歴史に残る多くの名作・傑作が生み出された充実の一年だったことは間違いありません。
- アーティスト: マイルス・デイビス,ウェイン・ショーター,ジョン・マクラフリン,ジョー・ザヴィヌル,チック・コリア,デイヴ・ホランド,トニー・ウィリアムス
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
- 発売日: 2002/12/04
- メディア: CD
「In a Silent Way」はSACD5.1chでも発売済。2chでは混沌としていた三人のキーボードですが、5.1chでは巧く分離しイメージが一新しています。
「Bitches Brew」については多くを語る必要はないと思いますが、Woodstockでジミヘンが「星条旗」を高らかに鳴り響かせた日から二日後にレコーディングを始めたことは記しておきます。
もう一つ、SQ4chLPもあり、2chでは窮屈だった配置が解放され、作品の音楽性をいっそう深めています。エコーを多用しているマイルスのTpは四方に飛び交い、浮遊感がより効果的です。SACD5.1chでの発売を期待していたのですが、マスターにも問題があるようで望み薄の状況。
日本盤のSQも多く出回っているのですが、このサラウンドが埋もれてしまうのはもったいないと思います。
2010-03-03 22:50
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「マイルス・デイヴィス青の時代」はすぐに買って読みましたが、
ほかの2冊はまだ未読、
さっそく買って読みます
マイルスってあまりに深すぎるので、
ハマるのが怖いです
by HIKKY (2010-03-04 20:32)
どうして何冊も、しかも立て続けに出るんでしょうね。
「聴く時間」より「音楽を読む時間」が多いのは何とかせねばと
思っております。
by sowhat (2010-03-04 23:20)