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剣岳 点の記 [映画]

かなり前、ほぼ一年前くらいから告知が始まり,やっと公開された!という感じです。
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業界語で「シャシンがいい」という表現がありますが,この映画が正にこれ、映像の力は並外れたものです。一切のギミック無し。CGなし。こんな環境で仕事ができること、これ以上の幸福はありえません。おまけに空撮もなし。こだわりは半端ではありません。


映画を観る前にやっておきたかったことは,木村大作監督のキャメラマンとしての代表作「八甲田山」を観ておくこと。「八甲田山」は紛れもない傑作であり,この過酷で危険な撮影実績が「剣岳」に大きな影響を与えていることは疑い様がありません。何度観ても「シャシン」の凄さとストーリーのスケールの大きさには心を動かされます。

満を持して観た「剣岳」。「八甲田山」と重なることは少なくありませんでしたが,ストーリー上、事故が少なく、「死」がない分,緊迫感は「八甲田山」の方がありますね。登山の厳しさとか撮影ポイントの危険度は制作裏話として知るものの,画面上に直接写るものではありませんから、比較的淡々とストーリーは進みます。どちらも史実がベースになっていますが、「八甲田山」の規模が大き過ぎて、「剣岳」の初登頂,日本山岳会との先陣争い,測量の実施など、ポイントがやや弱いことが不利になりました。

でも「八甲田山」との比較は本末転倒。「剣岳」の魅力は自然と人間の戦い,それは自然と映画の戦いであり,一コマ一コマに込められた魂を感じる「シャシン」は圧倒的です。日本映画の底力、ここにあり。これはリビングのテレビで観るものではなく,映画館の暗闇の中でドップリと浸りながら包まれるのもの、です。映画とテレビ・ビデオは違うものであることを改めて実感します。ストーリーを理解するのではなく、映像と同化できるのは映画しかありません。

それと音。映画の音はやっぱり非日常の音であり、非常識な大音量。音量を気にしながらでは全く意味がありません。音質はちょっと置いておいても、家庭内では出せない大音量の現実に身を委ねるのはいいものです。

唯一気になったのは演出。木村監督は名キャメラマンであっても初めての監督作品。別の監督だったらもう少し人物表現に深みが出るのだろうか...、と。「八甲田山」には秋吉久美子,「剣岳」には宮﨑あおいという、それぞれ旬の女優が華を添えているんですが,強く印象に残るのは秋吉久美子、なんですね。もう少しあおいちゃんを出して欲しかった。

週末の映画館はかなり混雑していました。「ルーキーズ」や「トランスフォーマー リベンジ」を観る十代で溢れ返っています。でも、「残席僅か」のアナウンスが流れたのは「剣岳」。シアターの中は中高年の男女で埋め尽くされていました。これは本当に嬉しい傾向です。

蛇足ですが「トランスフォーマー」は映画というより「大画面のゲーム」という感じ。一コマの意味は無く,動画になって初めて分かる映像の典型で「剣岳」の対極ですね。


八甲田山 特別愛蔵版 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: M3エンタテインメント
  • メディア: DVD


DVDは5.1ch仕様です。凝った演出はありませんが,サラウンドの吹雪には凍えそうになります。
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