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Porcupine Tree新作「The Incident」 [5.1chサラウンド]

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King Crimson40周年記念DVD-Audio発売の立役者、Steven Wilson。彼の存在がなかったら、今回のKing Crimsonの成功はあり得ませんでした。Steven Wilsonの評価が聞こえて来ないのは、音楽サラウンドの浸透度が低いということと、彼が率いるPorcupine Treeの知名度が日本では低いからでしょう。

2年ぶりの新作「The Incident」は先月発売され、欧米では上々の滑り出しでプロモーション・ツアーも盛況のようです。日本では相変わらずで、雑誌のCD評も数冊にしか登場していないし、評価に繋がる動きは今のところ感じられません。日本盤ではまだ5.1chは発売されていないし(発売の予定さえなさそう…)、 King Crimson40周年記念盤に合わせてプロモーションが盛り上がって欲しいものです。期待しているんです!

しかし…。個人的には彼らの5.1chには興味が湧くものの、作品自体に完全には好きになれないため、何とも悔しいジレンマが続いています。さて、今回の新作は…。

Porcupine Treeは、プログレとメタルにアコースティックを織り交ぜた、そんな感じで聴いているんですが、メタルの要素が私とは合わないのが致命的です。2002 年「In Absentia」からはその傾向が一層強化され、強調もどんどん暗くなって来ていました。新作はやや傾向が変わり、アコースティックのパートが増えたことが私にとっては嬉しい点。曲調も前作「Fear of a Blank Planet」ほどは暗くなく、昨年発表のソロ「Insurgentes」よりも明るくなっています。でも一言でいえば、テーマがテーマだけに、やっぱり「暗い」のですよ。

辛いのは、すべての曲をSteven Wilsonが書き、そして歌っているため、どうしてもパターンが似ているし、声域が狭いWilsonの抑揚の無さが影響しています。よくいえば味のあるクールな歌なんですけど、それが何曲も続くのは統一感というよりもマンネリに近い感じがします。他のメンバーは曲を書かないのでしょうか。それとギター中心の演奏を減らし、もっとキーボードの活躍を前面に出してもいいのではないかと思います。

5.1chはさすがです。
重厚なギターはさらに強化され、前後左右バランスよく定位した音場は効果的。広がるパートと一点に絞るパートの対比、メタルとアコースティックの対比がしっかり分けられていて、大きなスケール感が引き立てられ、2chでは到達できない立体感が溢れています。私としては、どうしてもアコースティックなパートに惹かれてしまうのですが、うっとりして気持ちよくなっていると、突然、重厚な爆音ギターにぶちのめされるんですけどね。

今作は一枚が一作品の連続した作品群になっていて、プログレ的な展開は多くの人に受け入れられる要素を持っています。まだ全部の歌詞を理解し切れていませんが、自伝的な内容の数曲は好感を持っています。ちなみにWilsonは1967年生まれ。The Beatles「Peppers」の発表の年、と歌う「Time File」は「Summer Of Love」の幸せな時代を懐かしんでいます。これは他の曲と雰囲気が違っていて、いい感じでした。

断定する情報が足りませんが、これは5.1chがオリジナルの作品だと思います。2chはついでで、オマケ。Wilsonの最近のインタビューを読むと、彼は既に2ch、コピー自由のCD-DA、ネット上の音源には見切りを付け、本当に金銭的価値のある作品に重点を置くという主旨の発言をしています。つまり、コピーが出来ない「DVD-Audio」「24/48,および96モードの音源」そして「豪華な写真集のジャケット」の発売を強化させるようです。昨年のソロ「Insurgentes」では「踏みつぶされるiPod!」の映像があり、iPod!、そしてイヤフォンで聴く音楽への反発を持っている様子です。サラウンドはスピーカーで聴くことが前提であり、彼らの音楽の真価はスピーカーで聴いて欲しいと言うメッセージが含まれていると思います。

Porcupine Treeの動向、今後どう進むのか。

はてさて、イヤフォン音楽の否定は、時代錯誤か、発展的挑戦か? 

5.1ch絶対を支持させ、2chを否定できるか?

iPod!が消滅するはずがありませんから友好的な共存も継続しなければ。「2ch否定」は極論としても、音楽は2chだけではない、ということはもっと認識してもらいたいことです。2chでは表現できない音楽を創造しているアーティストがいる、その作品がある、ということ。Porcupine Tree、そしてSteven Wisonは5.1chで自分たちを表現しているはずです。ステレオ2chが発表された1958年から早半世紀が過ぎました。いつまでも2chという狭い額縁に音楽を押し込めていては、何の進歩もないではないですか。市民がサラウンドに興味を持つ以上に、アーティストや音楽産業関係者が2chの窮屈さに不満が無いまま50年が過ぎ去っていることが問題なのかもしれません。配信音楽の現実は現実として取り込み、過去音源の忠実度追求もこの辺で終わりにして、音楽の本質を発展させ、音楽を聴く環境をもう一度整理し直し、音楽の金銭的価値を確実にする手段を真剣に考えなければ、50年後まで残る音楽を残せないと思います。

デビュー40年を迎えたKing Crimsonの、これからの40年。その存続にRobert Frippが賭けたのが5.1ch。託したのがSteven Wilson。King Crimsonを40年存続させたFrippだからこそ、5年後、10年後の世界を見抜いたからこその5.1chだった、と私は信じています。

それにしてもSteven Wilsonの存在に気付くのが遅かった。彼の5.1chミックスを見過ごして来た音楽ジャーナリズムは怠慢だと思う。グラミー賞ノミネートも意味が無かったのか。これからも無視できるのか?

King Crimson 5.1chがアーティストの耳に届けば、5.1chとSteven Wilsonの存在を無視することは絶対に出来ないだろう。世界は動くのだろうか?
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Steven Wilsonは何を見つめ、何を求めているのか。
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