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King Crimson「Red」を聴く [5.1chサラウンド]

red.JPG
ちょっと我慢していた「Red」。5.1chを思う存分、聴きました。

2chだったものが5.1chにリミックスされるということは、2chに押し込まれていた音源が分解・分離されて全方位に広がる新しい定位に置き直され、全く違う音楽体験を提供するということです。音楽の聴かせ方が違うので、2chの既成概念を取り除かないと十分に理解はできません。2chは前方にあるステージを想像して聴くものだとすれば、5.1chにはそんな固定されたステージは存在しないからです。ステージに横一列に律儀に並んだプレイヤーの演奏こそ音楽のすべて、と考えるのであれば、5.1chは非常識であり、意味の無いものに過ぎないのです。残念ながら…。

では「Red」の5.1chはどう聴こえるのか。


フロントchにはドラムとベースがどっしりと座ります。窮屈だったドラムが生き生きとし、ベースも太くなる。フロントのRchにメインのギターが加わり、ボーカルともう一本のギターや一部の管楽器がセンターchに独立。音源の干渉がなくなり、それぞれの楽器がクッキリと出ます。さらにもう一本のギターはリアLchに定位し、フロントのギターと対峙するようになります。適宜加わるヴァイオリンや管楽器はリアRch、およびR側面に広がり、やはりギターと対峙する位置に置かれています。メロトロンはリア全面から左右の側面まで広がって壁を作ります。

ミックスを担当したSteven Wilsonの特徴は、自らが弾くEギターにフランジャーやリバーブをかけてあらゆる方向に立体感を持たせるのことなのですが、今回は基本的に音源そのものに手を加えていないため、この得意技は封印されています。その代わりに静寂感、空気感という音の無い「間」や「余韻」が非常に効果的で、音源数が少なく、かつダイナミックレンジが大きい「Red」の特徴を一層引き出す結果になっています。ライブ録音された「Providence」の静と動の対比は5.1chが最も得意とする音場であり、極限状態の緊迫感が前後左右から迫ってきます。つまり、King Crimsonが持つ、叙情性と激情性の相対する二面性が、左右の広がりだけでなく、前後、そして全方向に広がったため、5.1chで頂点に登り詰めたのではないかと思います。

この「Red」にはリミッター/コンプレッサーがかかっていないのでダイナミックレンジが広く、ボリュームの設定を間違うと、とんでもない大音量が出てしまいます。不自然に太く厚くされた現代風の音に慣れてしまっていると、静寂の中の音を聴く音楽に出会う機会は少なくなります。小さな音ほど音質に差が出ます。小さな音は耳を澄まして聴くというのは爆音ロックの聴き方とは違いますし、BGMの聴き方とも違います。

5.1ch「Red」を聴いて、King Crimsonはリスナーに余裕を与えない集中を強制する音楽である、ということを嫌というほど思い知らせれました。グイグイと引き込まれてしまう感覚は2chではとても感じることはできません。
音源の良し悪しを比較、研究するのであれば、モノでも2chでも、アナログでもデジタルでもいいでしょう。24/96も聴くことができます。でも、一旦音源の忠実度研究を止め、音楽というものの本質を聴く新しい環境を追究しようと感じた時、初めて5.1ch、サラウンドの意義が分かるはずです。その新しい姿を聴いてもらうために作られたのが今度のKing Crimson40周年記念シリーズだということです。

King Crimsonは5.1chでさらに進化しました。この姿がFrippが想像していたのと同じだったのか、想像していたものと違ったのか、はたまた参加メンバーがどんな気持ちでこの5.1chを聴いたのか。反応がどうであれ、Steven Wilsonという新しい血がKing Crimsonに新しい命を鼓動させたのは間違いありません。

The BeatlesはリマスターCDを発売して40年前を忠実に再現してくれましたが、King Crimsonは40年後の進化した姿で生まれ変わった、ということではないでしょうか。
タグ:King Crimson
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コメント 3

ぷーちゃん

5.1chに関しては、わかりませんが、
クリムゾンは、静と動のコントラストが
素晴らしいので、コメントの意味は理解できそう。
( ̄▽ ̄;)!!
by ぷーちゃん (2009-10-11 16:30) 

kazz12000

こんばんは、初めまして。
やはり本式のセットで聴くと違いそうですね!うちはお恥ずかしながら2.1chっていうんですか、そんなヤツしかないためまだ本当のこの5.1ch DVD-Aの凄さを味わえていないのではありますが、音質の向上は間違いなく素晴らしいものを感じました。

いつか5.1chを味わえる日が来るよう、まずは仕事を頑張りたいと思います(笑)。
ブログ内にてリンク&トラバさせて頂きました。よろしくお願いします。
by kazz12000 (2009-11-13 23:42) 

sowhat

kazz12000さん

初めまして。
トラックバックありがとうございました。

サラウンドを聴く環境を整えるのはほんとうに大変です。
2.0chさえ大きな音で聴くのも迷惑がられます。
少しでも早く5.1chを聴ける日が来ることをお祈りします。

繊細な音が多い「宮殿」「Lizard」は
小さいシステムでも必ず楽しめると思います。
King Crimsonの今回の仕事は私たちを失望させません。

by sowhat (2009-11-14 10:37) 

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