ワイト島のムーディ・ブルース [5.1chサラウンド]
私が大好きなThe Moody Bluesは、現在の日本では人気があまりない。完全に過去のグループであり、プログレというカテゴリーの中でも微妙な立場で、どちらかといえば認知度が薄い感じがしています。
でも欧米では根強い人気があり、大規模なツアーが毎年催されています。最新のライブはBDでも発売。日本では無視されていますが。
これはフォーマット統一に破れたHD-DVDで先に発売されていたもので、HD-DVDの敗北宣言後、すぐにBDで発売されて、アメリカでの購買層と高い購買力が想像できます。
日本でも70年代前半までは水準以上の人気を得ていたと思うのですが、1974年の来日後、グループ活動も休止状態になったため急速に支持を失ってしまった印象があります。待望の来日公演だったのですが、評判があまりよくなかったことも影響しているようです。数年後にライブアルバムが発売されましたが、ファンの私が聴いても魅力的な内容ではありませんでした。従って全盛期のライブはどうだったのか、自分の耳で確かめることは出来なかったのです。
それから約十年後、「ワイト島フェスティバル(1970)」のビデオが発売され、初めて彼らのライブを目にすることが出来たのですが、「サテンの夜」一曲のみ。これだけでは何とも評価のしようはありません。
さらに約十年後、この「ワイト島フェスティバル(1970)」の未発表素材や、The WhoやJethro Tullの豊富な映像も発売され、だったらThe Moody Bluesも、と期待するものの、出てくる気配はありませんでした。
さらに十数年。やっと全貌が公開される運びとなりました。39年後、という何とも意味のない中途半端な時期。
音源としてCDのみは昨年に先行発売済で、DVDは翌年、という意図的な発売計画があったため、だったらDVDが出るまで待とう、というもんですよね。
レビューを読むと評判がまた悪い(笑)。わざわざ紙ジャケットにしてSHM-CDで再発までされたんですが。
2009年。やっとDVD発売。
めでたく日本盤も発売されます。が、輸入盤は¥1,500。CDより安い。数年前からCDとDVDの価格の逆転現象は顕著ですが、CDを買わずに待った甲斐があったなぁと。リージョンは「1」となっていますが、日本製プレイヤーでも視聴できます。
小さいですがThe Moody Blues演奏中。
収録時間がCDよりDVDの方が短いので、明らかに映像素材が足りないことは予想していました。仕方が無いだろうと。観てみると、予想通り映像が不足していました。いや、予想以上に映像が「無い」のです。CDに使っている音源素材はあるのでしょうが、それに対応するフィルムが無いんですね。撮影しなかったのか、撮影できなかったのか。The Whoのビデオが充実しているだけに悔しくなります。
DVDの発売が遅れた理由。足りない映像を埋めるために新たにインタビューを撮影し、さらに現在のワイト島をヘリコプターでLodgeが訪れます。Haywardはイタリア、Pinderはアメリカに住んでいるらしいので、海外ロケを敢行(笑)。それでも足りないので、別のライブビデオ素材で穴埋めをしています。「Sunset」では夕焼けと観客の素材で構成され、演奏シーンは全くありません。演奏が全部収められているのは4〜5曲程度です。曲順も入れ替えられて、相当苦心したことが痛いほど分かるんですね。
それでも意味のある発見も少なくはありません。演奏はしっかりしています。想像以上にいい。コーラスもしっかりやっています。ライブが下手、という評価は当てはまらないと思います。問題は演奏ではなく、PAに問題があったのではないかと思われます。
最大の見所は、メロトロン。ライブでの様子がここまで観られるのは無かったと思うのです。使っていた人が少ないですけどね(笑)。おまけにPinderが仕組みを説明するシーンが新たに撮影されていて、これは貴重だと思います。話に聞いていた「テープが上下する構造」がしっかり観られます。
観終わって感じたのは、同じステージに立ったThe Who、Jethro Tull、Jimi Hendrix、そしてMiles Davisらと較べると音楽性が全く違っていると言うこと。このような大規模な屋外コンサートには向いていないこと。このサウンドを当時のPAで鳴らすのは無理だったと思います。そしてメロトロンの重要性。The Moody Bluesの魅力はメロトロンだったと再認識。その後のシンセサイザーの発展でメロトロンは価値を失い、The Moody Bluesの一時代も同時に終わったんだなぁと思います。でも彼らの偉大な所は、歌中心に音楽性を変更し、80年代にもう一度ピークを獲得したことです。それを支えたのは、日本では観る機会が無かったコンサートだったことは事実であり、その延長が現在まで継続しているのですから。
Haywardが自分たちの音楽性を「イギリスとアメリカの中間」とコメントしているのが印象的でした。このポジションが魅力であるものの、見方を変えれば中途半端になる訳で、「中道保守」が特定のカテゴリーに収まりにくいことも、現在まで人気を維持しかつ確保していることも理解できます。ロックの最大公約数、ということでしょうか。
このDVDは5.1ch仕様です。音源素材はマルチが残っているのか、最大限のサラウンド処理が行われています。高得点は付けられませんが、よくぞここまで盛り返した、意欲と努力が感じられる力作です。映像素材が圧倒的に欠けているのにも関わらず、DVDにまとめ上げたスタッフの執念に尊敬します。
発売の意義は大きいのですが、このDVDが新しいファンを獲得するかどうかは疑問で、ファンとしては複雑な気持ちです。ただ¥1,500だったらお買い得、です。
でも欧米では根強い人気があり、大規模なツアーが毎年催されています。最新のライブはBDでも発売。日本では無視されていますが。
Lovely to See You: Live (Ac3 Dol) [Blu-ray] [Import]
- 出版社/メーカー: BMG/Image
- メディア: Blu-ray
これはフォーマット統一に破れたHD-DVDで先に発売されていたもので、HD-DVDの敗北宣言後、すぐにBDで発売されて、アメリカでの購買層と高い購買力が想像できます。
Lovely to See You [HD DVD] [Import]
- 出版社/メーカー: Image Entertainment
- メディア: HD DVD
日本でも70年代前半までは水準以上の人気を得ていたと思うのですが、1974年の来日後、グループ活動も休止状態になったため急速に支持を失ってしまった印象があります。待望の来日公演だったのですが、評判があまりよくなかったことも影響しているようです。数年後にライブアルバムが発売されましたが、ファンの私が聴いても魅力的な内容ではありませんでした。従って全盛期のライブはどうだったのか、自分の耳で確かめることは出来なかったのです。
それから約十年後、「ワイト島フェスティバル(1970)」のビデオが発売され、初めて彼らのライブを目にすることが出来たのですが、「サテンの夜」一曲のみ。これだけでは何とも評価のしようはありません。
さらに約十年後、この「ワイト島フェスティバル(1970)」の未発表素材や、The WhoやJethro Tullの豊富な映像も発売され、だったらThe Moody Bluesも、と期待するものの、出てくる気配はありませんでした。
さらに十数年。やっと全貌が公開される運びとなりました。39年後、という何とも意味のない中途半端な時期。
音源としてCDのみは昨年に先行発売済で、DVDは翌年、という意図的な発売計画があったため、だったらDVDが出るまで待とう、というもんですよね。
ライヴ・アット・ザ・アイル・オブ・ワイト・フェスティバル1970
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: ISOL DISCUS ORGANIZATION
- 発売日: 2008/12/03
- メディア: CD
レビューを読むと評判がまた悪い(笑)。わざわざ紙ジャケットにしてSHM-CDで再発までされたんですが。
2009年。やっとDVD発売。
Live at the Isle of Wight Festival 1970 (Dol) [DVD] [Import]
- 出版社/メーカー: Eagle Rock
- メディア: DVD
めでたく日本盤も発売されます。が、輸入盤は¥1,500。CDより安い。数年前からCDとDVDの価格の逆転現象は顕著ですが、CDを買わずに待った甲斐があったなぁと。リージョンは「1」となっていますが、日本製プレイヤーでも視聴できます。
小さいですがThe Moody Blues演奏中。
収録時間がCDよりDVDの方が短いので、明らかに映像素材が足りないことは予想していました。仕方が無いだろうと。観てみると、予想通り映像が不足していました。いや、予想以上に映像が「無い」のです。CDに使っている音源素材はあるのでしょうが、それに対応するフィルムが無いんですね。撮影しなかったのか、撮影できなかったのか。The Whoのビデオが充実しているだけに悔しくなります。
DVDの発売が遅れた理由。足りない映像を埋めるために新たにインタビューを撮影し、さらに現在のワイト島をヘリコプターでLodgeが訪れます。Haywardはイタリア、Pinderはアメリカに住んでいるらしいので、海外ロケを敢行(笑)。それでも足りないので、別のライブビデオ素材で穴埋めをしています。「Sunset」では夕焼けと観客の素材で構成され、演奏シーンは全くありません。演奏が全部収められているのは4〜5曲程度です。曲順も入れ替えられて、相当苦心したことが痛いほど分かるんですね。
それでも意味のある発見も少なくはありません。演奏はしっかりしています。想像以上にいい。コーラスもしっかりやっています。ライブが下手、という評価は当てはまらないと思います。問題は演奏ではなく、PAに問題があったのではないかと思われます。
最大の見所は、メロトロン。ライブでの様子がここまで観られるのは無かったと思うのです。使っていた人が少ないですけどね(笑)。おまけにPinderが仕組みを説明するシーンが新たに撮影されていて、これは貴重だと思います。話に聞いていた「テープが上下する構造」がしっかり観られます。
観終わって感じたのは、同じステージに立ったThe Who、Jethro Tull、Jimi Hendrix、そしてMiles Davisらと較べると音楽性が全く違っていると言うこと。このような大規模な屋外コンサートには向いていないこと。このサウンドを当時のPAで鳴らすのは無理だったと思います。そしてメロトロンの重要性。The Moody Bluesの魅力はメロトロンだったと再認識。その後のシンセサイザーの発展でメロトロンは価値を失い、The Moody Bluesの一時代も同時に終わったんだなぁと思います。でも彼らの偉大な所は、歌中心に音楽性を変更し、80年代にもう一度ピークを獲得したことです。それを支えたのは、日本では観る機会が無かったコンサートだったことは事実であり、その延長が現在まで継続しているのですから。
Haywardが自分たちの音楽性を「イギリスとアメリカの中間」とコメントしているのが印象的でした。このポジションが魅力であるものの、見方を変えれば中途半端になる訳で、「中道保守」が特定のカテゴリーに収まりにくいことも、現在まで人気を維持しかつ確保していることも理解できます。ロックの最大公約数、ということでしょうか。
このDVDは5.1ch仕様です。音源素材はマルチが残っているのか、最大限のサラウンド処理が行われています。高得点は付けられませんが、よくぞここまで盛り返した、意欲と努力が感じられる力作です。映像素材が圧倒的に欠けているのにも関わらず、DVDにまとめ上げたスタッフの執念に尊敬します。
発売の意義は大きいのですが、このDVDが新しいファンを獲得するかどうかは疑問で、ファンとしては複雑な気持ちです。ただ¥1,500だったらお買い得、です。
Moody Bluesは、童夢前後の作品しか
聴いた事がありません。
今も現役なんですね。
by ぷーちゃん (2009-07-25 17:20)