「Apostrophe」はライブ録音なのか？

音楽の知識は、レコード、CD、本、雑誌そして今はインターネット上の情報から得るのですが、それらの情報が違っていると、どれを信じればいいのか、自分自身が持っている証拠が無いのですから困ってしまいます。
ザッパのディスク・ガイドにはそのような食い違いが多く、どう決着すればいいのか、正解は出せません。
例えば「アポストロフィ」、ザッパがジャック・ブルースとジム・ゴードンが共演する、人気のある曲ですが、ここには「ライブ録音」と書かれています。え？ライブ録音だったっけ？？？




個人的な記憶だと「ライブじゃないよなぁ〜」と思いながらも、こう書かれていると自信がなくなるものです。それで資料を引っ張り出して確かめることになる訳です。これが面倒。

LPには触れていなかったので、まずCDの解説。

あぁ、ちゃんと書いてあるなぁ、「本作のタイトル曲は72年の9月のライブ録音で（中略）タイトル曲以外はスタジオ録音（後略）」。これに準じているのだろうなぁと納得。よく読めば、ディスク・ガイドの著者、和久井氏がこのCD解説から情報を多く得ているのも分かる。ちなみに、表記している曲名は、最新CDの邦題ではなく、ワーナー時代のLPの邦題を使っているんですよね。他の情報は調べなかったのか？

さて、念のため同じ筆者、大山甲日氏が書いた「ザッパのバイブル」である『大ザッパ論２』で探してみると、

「七十二年１０月下旬から１１月上旬にかけて何度かニューヨーク公演した際に、エレクトリット・レディ・スタジオ（ジミ・ヘンドリクスのエレクトリック・レディランド・スタジオ）でジャックを招いて本曲（アポストロフィ）を収録した」とある。この発行は2001年12月10日、前記のライナーノーツの日付は半年前の2001年6月となっている。どうして違うの？？？

ネットで出て来たのは、

「１１月エレクトリック・レディランド・スタジオで録音」は共通ですね。どう聴いてもライブには聴こえないしなぁ。

[Wikipedia]にはこの曲に関するザッパとブルースのコメントがあって、ブルース本人が参加してしてないとか、弾いたのはチェロだったとか、何が何やら…。でもやっぱりライブ録音ではないことは確かのようです。この時期、正に11月7日にジム・ゴードン、そしてもう一人の共演者トニー・デュラン（g）を伴って「プチ・ワズー」のコンサートをニューヨーク・ロングアイランドで行っていますが、もちろんブルースは参加していないし、この曲を演奏した情報は出てきません。コンサートの前後でエレクトリック・レディランド・スタジオに集まって録音した…と言う方が可能性が高そうですが。日付がピッタリなのが怖くはありますが。

う〜ん、大山氏の勘違いか？

もう少し探してみると、ブルースのウェブがありました。

え？パラマウント・スタジオ？ハリウッドじゃないですか。参ったなぁ。どっち？？？
ブルースの[Wikipedia]にもこの件に触れていて、参加して曲も共作したと言いつつ、弾いたのはチェロだったとトボケているようだし。「大ザッパ論２」には、ザッパがエレクトリック・レディ・スタジオにチェロを用意していたが使用に耐えなかったという記述もあって、もう、グチャグチャです。ザッパとしてはブルースのチェロを望んでジャムをやってみたけど、あまりうまく行かなかった。それでベースにファズをかけてもう一度やってみた、なんて推測が立たない訳でもありません。ブルースはこのファズ・ベースが気に入らないのかなぁ？

ま、いずれにせよライブ録音ではないと思われますので、個人的には「修正」といたします。

こんなことばっかりです。確かめて見れば見る程、情報が食い違う。

確証は得られませんが、より多くの情報を見較べて、より確実な情報にまとめるしかありません。だからこそ、この「ディスク・ガイド」には期待したんですが、全く薮蛇になってしまいました。

断定は出来ないとはいえ、本もCDも絶対に信用できるとは言えないことは残念なことです。複数の情報を総合的に分析しないといけない、という至極常識的な結論です。

最後に、もし「アポストロフィ」はライブ録音であるという情報をご存知であれば教えてください。

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