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フランク・ザッパ/キャプテン・ビーフハート・ディスク・ガイド [Frank Zappa]

ここ暫く音楽5.1chソフトの話題がなく更新が滞っています。King Crimson『太陽と戦慄』DVD-Audioが年頭に発売されるのではないか、というSteven Wilsonの発言が最新インタビューにあったのですが、今のところ音沙汰なしです。特典映像の準備に時間がかかっているようです。

IMGP0759.JPGさて、5.1ch以外の最近のお楽しみは、先月発売された「フランク・ザッパ/キャプテン・ビーフハート・ディスク・ガイド」。生誕70年、および隊長の追悼記念として発売され、ツイッターなど一部では話題になっております。二人の作品がまとめられるのは初めてだと思いますし、便利に使えるのではないかと思いながらも、著者が著者だし、かつマニアが異常にマニアックな二人ですから出来上がりを心配しつつ読み進めております。まぁいろいろあるだろうなぁと想像していましたが…気付いた所に付箋を貼っていたら、かなり必要になりました。

とりあえず修正、補足が必要な箇所が約50件、個人的に補足しておきたい項目が50件以上あり、読めば読む程書き込みが増え、一部が「Black Page」状態になりそうな雰囲気です。MM社が発行しているのにこの多さはちょっと気になります。

発売日、録音日やメンバーの在籍期間のデータの間違いは、ザッパ本人が間違えているデータもあるし、でも年が間違ってなければ大勢に影響は無いし、それこそマニアックな領域です。間違えてもいいとは言えませんけど。

でも「Freak Outの日本盤は一枚に編集されて発売された」とか、LPでは途切れていた曲がCDではめでたく繋がったとか、息子アーメットを「娘」と間違ったり、特典付属の「便座シート」を「紙ナプキン」と書いてあったり、明らかなミスが目立っています。本文の中で「一冊の本をつくる作業には多くの人が関わり、原稿の一字一句に編集者のチェックが入る。(略)それでも間違いが発見できなかったり、誤字脱字のチェック漏れがあったりするものだけど、(略)こちらは定価にふさわしい責任は果てしているつもりである」と、ミスの多さを見越したかのような宣言があるのが虚しいものです。編集者はどれくらい校正したのか「内助の功」を「内助の候」と誤植(変換ミス)してしまっては、内助の功にはなっていません。

サラ〜っと読んだ時は、あまりマニアックな話題には立ち入らず、どの盤が高音質であるという著者のお得意分野の記述も少なく(なくはないけど)「ごく一般的なロック・ファンが手にしやすい」という主旨を感じてはいたのですが、曲名の表示があまりに不親切。アルバム毎の曲名はLPが基本で英語表記。しかし解説は邦題を使い、しかも現行の邦題にLP時代の邦題が混じり合い、しかもCDとの連携は無視しているので、この邦題の曲はCDの何曲めに入っているのか分からないという表記。これではCDで聴く「ごく一般的な」人たちを対象とした「ディスク・ガイド」の基本的な目的を果たしていない。2011年発行であれば最新のCDに合わせた曲名、曲順を伝えるのが最優先ではないでしょうか。残念ながら製造中止の日本盤も多いのですが「国内CDなし」ではなく最後の発売情報を入れてあげるのが新しいファンのためになったはずです。

元々作品数が異常に多いザッパ、初心者の悩みは、どれから聴いたらいいのか分からないと言うことですが、それに対する分かり易い区分けはなく、全部読まないと分からないような構成になっているのも残念なことでした。「ごく一般的な」と言いながら、著者が断っているように「ザッパ/ビーフハート」の枠ではなく「ビザーリー・ロサンジェルス・ロック・マテリアル」という新しい解釈を潜ませていること、割り切らなかったことが、結局、一般的でもなく、マニアックでもなく、中途半端な結果になってしまったようです。

frank_zappa_quaudiophiliac_back0.jpegザッパには2枚のDVD-Audioがあるんですが、どうやら著者は5.1chで聴いたことがないようで、『QuAUDIOPHILIAc』について「普通にステレオで聴いても音質はすばらしく」と、サラウンドの音響ではなくステレオでの音質の良し悪しで済ましています。続けて「しかし、ザッパ・ファンが求めているのはこういう作品ではないような気がするのだ」「何だか、オーディオ・ショーみたい。この辺の失敗(略)」と、ザッパ自らミックスしていた「サラウンド作品」としての本質を聴くことは避けている。サラウンドを否定するのであれば「サラウンドで聴くことが出来ないのだが」と断ることが最低限必要なのではないでしょうか。というより、サラウンド作品を聴く気がないので触れることがそもそも間違っています。3D映像を3Dで観ないで、立体映像の良し悪しの評価なんかできる訳はないのです。
ザッパには2枚の(アナログ)4チャンネル作品もあるのですが、4チャンネルを聴くことは出来ないのでしょうし、レア・アイテムとしての無用なコレクター情報にも全く触れていないのはいいことです。

200motels1.jpg

個人的には「歌詞」なんですよね、ザッパは。

歌詞が分かったら百倍楽しくなること、間違いありません。音と音質に重きを置く著者に歌詞、内容の解説は酷だったとは思いますが、ザッパの歌詞のおもしろさを紹介してこそ、新しいファンを生み出す新しい「ディスク・ガイド」に成り得ると思うんです。ザッパの歌詞については、日本盤を買った人だけが楽しむのみ。80年代は歌詞を読みたいがため、価格が高くても日本盤をわざわざ買う、という逆転現象さえありました。


機械的に原題を羅列して、しかもオリジナル主義でLPの仕様を並べたものと、
日本盤の入手が難しいけど、CDの内容にそって味のある邦題を紹介した方がいいか、どちらが一般的で、どちらがマニアックなのでしょうか。



motele2.jpg
ツイッターでは頻繁にザッパの「変な邦題」が話題になります。確かに的外れな「変な邦題」があることは否定しませんが、内容をコンパクトに表すものも少なくないので、「カタログ紹介」ではなく、「曲のガイド」として独自にでも邦題があった方が興味をかき立てると思うんですよ。特にザッパは!
だからこそ日本語出版物に期待を寄せているのだし、「フランク・ザッパ- 歌詞全訳大全」なんて出版してくれたら嬉しいのですが。購買数は多くはないのだから、電子書籍なんか最適だと思うのですが。


あれ?これは本当?違うんじゃないと、ぶつぶつ言いながら、あれこれと資料を調べ直しているうちに、あれ、これは「ザッパ検定問題集」か?という雰囲気になって来て、忘れていたこと、あやふやだったことを勉強し直す絶好の機会になったことは否めません。来月には「レコード・コレクターズ誌」で正誤表を発表するそうなので、何となく合格発表を待つような気分です。受かるかなぁ?

ザッパの歴史を振り返り、見直し、新たな発見を引き出してくれたことは感謝です。ビーフハートについては知らないことがたくさんありました。自分なりの情報を書き込んでこれから5年くらいは重宝すると思います。
タグ:Frank Zappa
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HIKKY

私ももちろんこれ買いましたが、まだ読んでませんでした
sowhatさんの指摘、勉強になります
ZAPPAとMILESって、アルバムの枚数が多すぎて、確かにどこから聴いていいのかわからないがゆえに、なかなか手を出せなかったりします
もっとも、私自身は最初から順に体験していかないとイヤ、というやっかいな性格なんですが

by HIKKY (2011-02-09 23:49) 

sowhat

HIKKYさん

枚数が多すぎるので迷いますよね。
以前やったザッパの人気投票の結果です。参考になればいいのですが。

http://sowhat1993.blog.so-net.ne.jp/2010-08-29
by sowhat (2011-02-11 01:09) 

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