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Nick Decaro 「Italian Graphity」 [70年代]

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いわゆる「AORの名盤」。大売れしてはいなと思いますが、熱心なファンの支持を確実に掴んでいます。少し前に紙ジャケットでもCDが発売されました。が、CD発売は日本のみ。この作品、日本以外ではとても不幸な境遇にあり、入手の難しさが名盤の箔を頂くのに影響されているように思います。



オリジナルの発売は1974年、US Blue Thumbからの発売で、日本ではまず日本ビクターから発売されています。ところが発売前からBlue Thumbの経営が危うくなり、程なくABCに吸収されてしまいます。これが不運の始まりで、おそらくアメリカでは初版のLP以降、再発売されていないようなのです。少なくとも私は見たことがありません。従ってオリジナルの発売数が極端に少なく、見事「幻のX盤」となってしまいました。
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私がこの作品を知ったのは1976年。幸運だったのは権利を持つABCの販売権が東芝から日本コロムビアに移り、目出度く「Italian Graphity」が再発売。この時に作品の紹介を読み、出会うことと相成りました。

「Italian Graphity」は、アレンジャーが本業のNickにとって二枚目のLP。自作曲は無く、選曲の妙、そしてアレンジの妙が評価に繋がっています。ただヴォーカルはプロ級とは言えず、いわゆる下手ウマ、ですよね…。
これが収録内容と原曲です。
(1)UNDER THE JAMAICAN MOON Leah Kunkel & Stephen Bishop

Leah KunkelはMamas & PapasのCass Elliotの妹で、名ドラマーRuss Kunkelの元奥さん。彼女のデビューアルバムに収録されてます。

(2)HAPPIER THAN THE MORNING SUN(輝く太陽)Stevie Wonder

説明不要。Stevieの快進撃が始まった「心の詩」に収録。

(3)TEA FOR TWO(二人でお茶を)Tommy Dorsey

すでにスタンダードの名曲であり、様々なアレンジがあります。

(4)ALL I WANT Joni Mitchell

『BLUE』収録のオリジナルがなくって、1974年のライブ『Miles Of Ailes』より。

(5)WAILING WALL Todd Rundgren

この曲は当時入手難度が高かった『THE BALLAD OF TODD RUNDGREN』収録のため、私はNickのヴァージョンが先でした。Toddの本質がよく分かります。

(6)ANGIE GIRL Stevie Wonder

再びStevieの曲。『 MY CHERIE AMOUR 』 より。よほどお気に入りだったのでしょう。個人的にはNickのが先でした。

(7)GETTING MIGHTY CROWDED Betty Everett

私は全然知らない曲です。

(8)WHILE THE CITY SLEEPS(町はねむっているのに)Randy Newman

Randy Newmanの曲で、Irma Thomasの1964年の作品。よく分かりません。

(9)CANNED MUSIC Dan Hicks and the Hot Licks 『STRIKING IT RICH』

同じレーベルの仲間の曲をカバー。

(10)TAPESTRY
Carole Kingとは同名異曲。検索に全くヒットせず、詳細不明です。

暇つぶしに探した結果です。おそるべしYouTube。よくもまぁ、集まっております。聴き較べるとアレンジのおもしろさが分かりますよね。個人的には「All I Want」の変わり様がお気に入りです。名作『Blue』のトップを飾る、Joniの曲の中でも好きな曲で、シンプルな曲がここまで変わったのは驚きでした。Joniはどう感じているのでしょうか。

この「All I Want」のアレンジ、もちろんNickの功績ですが、探してみると1971年、DianaRossが抜けた後のThe Supremesの『Produced and Arranged by Jimmy Webb』に収録されていたんですね。

この曲、どう思いますか?アレンジもJimmy Webb。Nickが聴いていた可能性は捨てきれませんね。

さて「Italian Graphity」、実質的に日本だけで聴き込まれた可能性が高そうです。アメリカではレーベルの不幸が付きまとい、Blue Thumbを吸収したABCは、更にMCAに吸収され、現在はUnivarsalに吸収されてきました。日本では吸収の度にワーナー、ビクターから再発売され、とうとう世界初のCD化も実現し、その時々で新たなファンを獲得して来ています。

大傑作ではないと思いますが、「佳作の大名作」と言えるかな。
日本に生まれてよかったですね。
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