Miles Davis 「Bitches Brew」 [4チャンネル]
最近はあれこれとMilesを読み聴く機会が増えていました。聴き直し、読み直しという感じで、ちょっと忘れかけていたことを思い出したり、気付いてみたりです。
思い出した本が中山康樹「Bitches Brew - エレクトリック・マイルスのすべて」、1994年、発売25周年の発行でした。
読んだのは一度切り、本自体の存在を忘れていましたから、しばらく復習として読み直していました。今読むと、断片的な情報が巧く繋がり、流れが整理されて納得するばかりでした。15年前はちょっと情報不足、勉強不足だったことは否めません。「エレクトリック・マイルス」の全体を俯瞰するには絶好の一冊であることを再認識した次第です。
「エレクトリック・マイルス」の難しさは、LPを発売順に聴いても流れが掴めないということ。一旦、曲単位でバラバラにし、録音順に並べ直さないと本当の変化が見えて来ないということです。5〜6枚だったら簡単かもしれませんが、1967年から1975年に発売された約30枚の分解・組立が求められるのです。いやはや、その手間は並大抵ではないことです。
以上は一般的なアプローチでしょうが、私としてはやっぱり4chの魅力に惹かれます。
「Bitches Brew」の日本盤4chは1972年5月、かなり早い時期に発売されています。2chの発売からは約2年後。
US盤はレーベルがゴールドの豪華仕様。内ジャッケにはSQ方式の解説が追加されています。4chのミキシングはRoy Mooreで、MilesやTeo Maceroが関わった記述は見当たりません。発売日は分かりませんが、日本より数ヶ月早かったと推測されます。
残念ながら4chミックスの評価は、何一つ見聞きしたことがありません。いい話も悪い話もなし。聴かれたことがないのか、書くほどの評価がなかったのか、ジャズに評価してもらえなかった4chの縮図を見るようです。
この4chは「SQ方式」で、専用のデコーダーを通さないと聴くことができないのですから、こんな特殊な音源を説明した所で何の意味もなく、自己満足の最たるものなのですが、ここでしか聴くことができない、2chでは再生できないMilesの神懸かり的な世界があることだけを記しておきます。
4ch、現在の5.1ch、サラウンドという音響は「立体的な音響」として表現されますが、Bitches BrewのMilesの音場は、究極の立体的音響と言えるものです。主役がMilesのトランペットであり、リスナーの場所である中央、その上方に高らかに鳴り響く音場に作られています。その他の楽器は正に伴奏。四方に行儀良く、バランス良く据わりますが、脇役に過ぎません。天上高く鳴り響くMilesをただただ引き立てるのみ。Milesのトランペットにはエコーが掛けられていますが、平坦な2chとは全く効果が違い、上から降りて来るような感覚、部屋全体に響き渡ります。その他の音源がそれぞれ一カ所に固定されていますから、Milesだけが強調され、分離され、正に立体的にリスナーに襲いかかって来るのです。Milesだけがカラーで、伴奏は白黒、そんな極端な対比も不自然ではありません。Milesの存在感。絶対的な存在感が完璧に再生されるのが4chミックスの特徴なのです。
バックの演奏が一歩下がってしまっているようですが、4chの効果は楽器一つ一つの存在を確実に浮かび上がらせています。音源の芯が太い。Eギター、ドラムス、シンバル、キーボード、そして印象的なバス・クラリネットなど、どれも自己主張が高く、2chに押し込まれた圧迫感はなく、伸び伸びと暴れ回っています。
Milesの5.1chは、SACDが「Kind Of Blue」と「In A Silent Way」という、SQ4chが無かった作品ばかりが発売されています。本命は歴史的名盤でもあるこの「Bitches Brew」に違いないはずなのですが、技術的な問題、4chマスターやマルチに問題があるのかもしれません。40周年であった昨年2009年に何も発売されなかったことは残念なことでした。何とか4chミックスが公開できるような機会が与えられることを望むばかりです。
2chとのミックス違いが時々話題になるのですが、曲の構成上、私の能力では指摘が出来ません。ただし、時間が少々異なっているのは事実です。(2chの時間----SQ4chの時間)
1. Pharaoh's Dance___20:06---19:35
2. Bitches Brew___27:01---26:45
3. Spanish Key___17:34---17:30
4. John McLaughlin___4:22------4:23
5. Miles Runs The Voodoo Down___14:04---14:03
6. Sanctuary___10:59---10:54
約30秒違う曲あるのは気になるでしょうが、重要なのはMilesの音そのもの。4chには多くの人が聴いたことがないであろう、Milesの究極の世界があることを心に留めておいてください。
たぶん中山康樹さんも聴いたことがないMiles…。だとすれば、ちょっと嬉しいです。
思い出した本が中山康樹「Bitches Brew - エレクトリック・マイルスのすべて」、1994年、発売25周年の発行でした。
左:日本盤SQ4ch、右:US SQ4ch
読んだのは一度切り、本自体の存在を忘れていましたから、しばらく復習として読み直していました。今読むと、断片的な情報が巧く繋がり、流れが整理されて納得するばかりでした。15年前はちょっと情報不足、勉強不足だったことは否めません。「エレクトリック・マイルス」の全体を俯瞰するには絶好の一冊であることを再認識した次第です。
「エレクトリック・マイルス」の難しさは、LPを発売順に聴いても流れが掴めないということ。一旦、曲単位でバラバラにし、録音順に並べ直さないと本当の変化が見えて来ないということです。5〜6枚だったら簡単かもしれませんが、1967年から1975年に発売された約30枚の分解・組立が求められるのです。いやはや、その手間は並大抵ではないことです。
以上は一般的なアプローチでしょうが、私としてはやっぱり4chの魅力に惹かれます。
「Bitches Brew」の日本盤4chは1972年5月、かなり早い時期に発売されています。2chの発売からは約2年後。
US盤はレーベルがゴールドの豪華仕様。内ジャッケにはSQ方式の解説が追加されています。4chのミキシングはRoy Mooreで、MilesやTeo Maceroが関わった記述は見当たりません。発売日は分かりませんが、日本より数ヶ月早かったと推測されます。
残念ながら4chミックスの評価は、何一つ見聞きしたことがありません。いい話も悪い話もなし。聴かれたことがないのか、書くほどの評価がなかったのか、ジャズに評価してもらえなかった4chの縮図を見るようです。
この4chは「SQ方式」で、専用のデコーダーを通さないと聴くことができないのですから、こんな特殊な音源を説明した所で何の意味もなく、自己満足の最たるものなのですが、ここでしか聴くことができない、2chでは再生できないMilesの神懸かり的な世界があることだけを記しておきます。
4ch、現在の5.1ch、サラウンドという音響は「立体的な音響」として表現されますが、Bitches BrewのMilesの音場は、究極の立体的音響と言えるものです。主役がMilesのトランペットであり、リスナーの場所である中央、その上方に高らかに鳴り響く音場に作られています。その他の楽器は正に伴奏。四方に行儀良く、バランス良く据わりますが、脇役に過ぎません。天上高く鳴り響くMilesをただただ引き立てるのみ。Milesのトランペットにはエコーが掛けられていますが、平坦な2chとは全く効果が違い、上から降りて来るような感覚、部屋全体に響き渡ります。その他の音源がそれぞれ一カ所に固定されていますから、Milesだけが強調され、分離され、正に立体的にリスナーに襲いかかって来るのです。Milesだけがカラーで、伴奏は白黒、そんな極端な対比も不自然ではありません。Milesの存在感。絶対的な存在感が完璧に再生されるのが4chミックスの特徴なのです。
バックの演奏が一歩下がってしまっているようですが、4chの効果は楽器一つ一つの存在を確実に浮かび上がらせています。音源の芯が太い。Eギター、ドラムス、シンバル、キーボード、そして印象的なバス・クラリネットなど、どれも自己主張が高く、2chに押し込まれた圧迫感はなく、伸び伸びと暴れ回っています。
Milesの5.1chは、SACDが「Kind Of Blue」と「In A Silent Way」という、SQ4chが無かった作品ばかりが発売されています。本命は歴史的名盤でもあるこの「Bitches Brew」に違いないはずなのですが、技術的な問題、4chマスターやマルチに問題があるのかもしれません。40周年であった昨年2009年に何も発売されなかったことは残念なことでした。何とか4chミックスが公開できるような機会が与えられることを望むばかりです。
2chとのミックス違いが時々話題になるのですが、曲の構成上、私の能力では指摘が出来ません。ただし、時間が少々異なっているのは事実です。(2chの時間----SQ4chの時間)
1. Pharaoh's Dance___20:06---19:35
2. Bitches Brew___27:01---26:45
3. Spanish Key___17:34---17:30
4. John McLaughlin___4:22------4:23
5. Miles Runs The Voodoo Down___14:04---14:03
6. Sanctuary___10:59---10:54
約30秒違う曲あるのは気になるでしょうが、重要なのはMilesの音そのもの。4chには多くの人が聴いたことがないであろう、Milesの究極の世界があることを心に留めておいてください。
たぶん中山康樹さんも聴いたことがないMiles…。だとすれば、ちょっと嬉しいです。
最近出た中山氏のマイルス関係の新書3冊を読んで、
今年はマイルスを探求する年にしよう、と
勝手に思っております
メンバーのアンサンブルが縦横無尽に駆け巡る「Bitches Brew」、
確かに5.1chで聴いてみたいです
by HIKKY (2010-03-15 21:32)
私もちょっと勉強不足でした。
やっと追いついた…という感じです。
サラウンドは、お聴きいただける機会が作れればいいのですが。
by sowhat (2010-03-16 00:22)