NHK ボヘミアン・ラプソディ殺人事件 [TV]
「幻の名曲」ってよくありますが、「幻のテレビ番組」というのもあって、放送が一回、もしくは数回しか無く、観たくても観られない番組があります。
この「ボヘミアン・ラプソディ殺人事件」も、ほとんど観られていない「幻のテレビ番組」の一つだと思います。私も観たことがありませんでした。2002年、今ほど普及していなかったNHKハイビジョンの放送で、再放送があったそうですが、デジタル番組表も無い時代でしたから、Queenファンの間でも話題になっていた「幻のテレビ番組」でした。
放送開始20年を記念したリクエストに応え、見事に再放送されたということは、多くの投票、特にQueenファンの方々の投票が集まった結果だということでしょう。
1999年、イギリスで行われた「過去1000年の曲」投票で第一位になったのがこの「Bohemian Rhapsody」。二位が「Imagine」、三位が「Hey Jude」というJohnとPaulを抑えての結果でした。イギリス人の国民性が良く出ています。番組は、この結果を受けて制作されたことが明らかにされ、十分に「イギリス」を意識した内容でまとめられています。私のように英語に弱いものにとって最大の壁は、歌詞。決して嫌いな曲ではありませんが、歌詞が、私にとっては支離滅裂で、無視するしかない扱いでした。
改めて訳詞を読み直しても、何を言っているのか全く理解できないのが正直な感想ですが、この番組を観て、やっと理解できました。表面上は「コメディ風の謎解き番組」なのですが、調査と研究、出演者の人選とコメントは専門的で、幅広い観点から曲を分析しています。正にFreddie Mercuryの人生観、そのものであったことが分かりました。曲の印象が全然変わってしまいました。やはり、歌詞を読み込むことは重要だと思いますが、私程度の知識、能力では、こんな理解までは辿り着けるはずはありません。「幻のXX」って、知ってみると???というものも少なくありませんが、この番組は本当に「幻の名作」、もっともっと多くの人に観てもらいたい番組でした。また再放送して欲しいと思います。
内容は、要素が多過ぎて簡単に説明しきれませんが、純粋なイギリス人で無かったFreddieの生い立ち、苦悩、同性愛、ゾロアスター教、そして成功への希望を意識して歌詞を読み直してみてください。「Mama 〜」という歌詞が出てきますが、その本人、Freddieのお母さんも登場しています。
印象に残るのは、「Bohemian Rhapsody」が非常にイギリス人に浸透していること。イギリスのもう一つのAnthem(国歌)として広く認められ、だからこそ「過去1000年の曲」の第一位に選ばれる。ここから掘り下げればイギリス人の国民性がもっとよく理解できますね。いやはや凄い影響力を持っている曲です。
録音は24トラックで、その一部も聴くことが出来ます。最終的に使われていない音源もちょっと聴けました。最大の特徴であるコーラスは、番組では「150トラック分」相当の多重録音と説明され、如何にこだわったかが分かります。このDVDでは、録音工程の裏話が語られていました。
ただ残念なのは、最終的にコーラスが2トラックにまとめらてしまったこと。「Bohemian Rhapsody」収録の『オペラ座の夜』は逸早く5.1ch化されたのですが、サラウンドの完成度は今一つでした。コーラスが2トラックで前後に分けられない、物理的な制約が無かったらもっと効果的なサラウンドが構成できたのではないかなぁと思います。DVD-Audio版(上)は、歌詞が曲と連動して変わる仕様。私が知る限り、この画期的なDVD-Audioの仕様を実践したのはこのDVD-Audioだけ。2002年、dts社にとって最初のDVD-Audioで、満を持して発売され、DVD-Audioに大きな期待が集まっていたのですが、実績を上げられなかったのが痛かったです。
続いて2003年、『The Game』もDVD-Audioが発売されたのですが、もう話題にもならず、発売そのものも知られていないような気がします。振り返ってみると、この頃がDVD-Audioのピークだったのですが、Queenをしても普及が難しいDVD-Audioでした。発売から3〜4年、この流れが「4チャンネル」とそっくりなのですよ。悪夢が過りました。そして終わったなぁ、と感じたものです。
King Crimsonでちょっと注目を集めた音楽サラウンド。果たして2010年ではどれくらいの実績を上げることが出来るでしょうか。
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