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Carpentersのリマスターとリミックスとリレコ [70年代]

The BeatlesのリマスターCD祭りも一段落。その影でひっそりと発売されたThe Rolling Stonesのリマスターはほとんど話題とならないまま、熱心なファンだけに聴かれているのでしょうか。かつてSACDも発売されたんですけどね。余りにも差がある注目度の違いに、改めてThe Beatlesの人気の高さに驚かされます。

さて、The Rolling Stonesよりも日本国内のセールスの上では圧倒的に売れているCarpentersですが、彼らのCDもリマスターだのリミックスだのリレコだのいろいろあったのですが、The Beatlesほどマニアックなファンが少ないためか、話題になることはありませんでした。

私が知る限り、CarpentersほどCDにリミックスされた曲が多く、オリジナルの形態を変えたアーティストはいないのではないかと思います。実質的にCarpentersの音楽権利を管理している兄Richardは徹底した完全主義者で、自分たちの作品がCD化されるにあたり、徹底的に改善を施して行きました。01.jpgつまり、当時はアナログで聴くことを前提にマスターを作っていたのであって、CDのように詳細でクリアな音質で聴かれることを想定していなかった。CDになると、多くの「不都合」が露見してしまうため、良い音でファンに聴いてもらえるよう、修正とリミックスをさらにリレコを積極的に行ったのでした。Richard曰く「CD時代にふさわしい音をファンのために」と。

元来、Carpentersにはリミックス・バージョンが少なくなく、「Top Of The World」はアメリカでシングルカットされる際にリレコを行ったシングルバージョンで発売しましたし、1973年発売の「Singles」では「涙の乗車券」にリレコを行っています。最初の大規模なリミックスはまだアナログの時代、「Anthology」という集大成ボックスで行われました。再編集にあたり、過去の音源を聴き直すとあれこれと気になる部分が見つかったんでしょうね。手直しされる音源は2枚目の「Close To You」から5枚目の「Now And Then」に収録されている曲に集中していて、つまり彼らの絶頂期にあたり、録音・ミックスに十分時間がかけられず妥協せざるを得なかったことが想像されます。CD時代になると改善はさらに拡大し、例えば「Yesterday Once More」のピアノは、電子ピアノに差し替えられました。ピアノのイントロが印象的な曲なのに。確かにピアノの音がちょっと籠ってはいますが、差し替えるのは行き過ぎと感じたのは、古いファンだからなのでしょうか。

日本の洋楽でいちばん売れたCDがこれ。

青春の輝き~ヴェリー・ベスト・オブ・カーペンターズ

青春の輝き~ヴェリー・ベスト・オブ・カーペンターズ

  • アーティスト: トニ・スターン,レオン・ラッセル,ジュース・ニュートン,ポール・ウイリアムズ,ニール・セダカ,ピーター・ユーデル,ジオフ・ステファンズ,ハンク・ウィリアムス,ジョン・ベティス,テリー・スキナー
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1995/11/10
  • メディア: CD


350万枚売れたのが数年前でしたが、その後、どこまで増えたのか。
このCDに収録された22曲の内、リミックスされオリジナルとは異なる曲はクレジット表記では15曲ですが、実際には17曲あります。つまりオリジナルの形を留めているのは5曲しかないんです。聴いてみてリミックスと分かるかどうかでCarpenters熱中度が分かるはずです。

また、Carpentersは「ベストもの」が異常に多いのも特徴ですが、ヒット曲で使われるバージョンが「シングル・バージョン」になることは必然です。ところが、オリジナル・アルバムもシングル・バージョンに差し替え始めるんですね。堂々と。だからアルバムのオリジナル性が崩れてしまいました。Richardは過去のミスを修正したかった訳ですが、差し替えに違和感を抱く熱心なファンの声を聞き、1999年以降発売のオリジナルアルバムはリミックスは使わないでオリジナル通りのリマスターを採用し、リミックスはベストのみにしか使わないという方針が決まったのです。

さらにデジタルメディアの集大成として再度大胆なリミックスを行い、5.1chミックスも追加してSACDを作り上げます。

Singles 1969-1981

Singles 1969-1981

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: A&M
  • 発売日: 2005/01/11
  • メディア: CD


私のようにアナログ音源を刷り込んでしまっていると、リミックスはなかなか馴染めないし、拒否反応が出ます。でも冷静にリミックスを聴くと、確かにオリジナルよりも音質自体は上、と認めざるを得ないのです。SACDはデジタルの最終型を極めた渾身の作品でもあり、別次元と割り切れるほど素晴らしい完成度があります。残念ながらオリジナルではSACDにするだけの音質はない、というのが事実だと思います。

マニアックな聴き方ですが、SACD 5.1chのセンターchには(「Close To You」を除き)、イフェクとがかかっていないKarenの生声が収録されています。この生々しい声には心底感動します。オリジナルのマルチを聴く感覚で各々のchを単独で聴くことができるのも5.1chの隠れた魅力です。

CarpentersのCDは発売以来いろいろな混乱があったのですが、結果として、

 当時のファンにはオリジナルに忠実なリマスターを、
 若いファンにはデジタル用のリミックスを、
 そして最高音質のSACD、はたまた5.1chまでを


Richardは提供し、理想的な形が完成しました。時代に沿ったメディアが揃って、自由に選べるということは幸せなことです。

ただ残念なことに、このSACDは製造中止状態です。
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